別添2
基発第0702003号
平成16年7月2日
都道府県労働局長 殿
厚生労働省労働基準局長
( 公印省略 )
蛇紋岩系左官用モルタル混和材による石綿ばく露の防止について
左官工事等において刷毛塗り作業の作業性の向上を図るために、蛇紋岩を粉砕したモルタル混和材が種々販売され、作業現場においてセメントと混ぜ合わせ、水を加える等により使用されているが、それらのほとんどは石綿を含まない「無石綿製品」等として販売されている状況にある。しかしながら、現在最も広く行われているX線回折を用いた分析法では、蛇紋石を構成するクリソタイル(石綿)とアンチゴライト及びリザルダイト(いずれも非石綿)がそれぞれ当該成分の含有を示すピークをほぼ同じ位置に持つため、クリソタイルが入っているにもかかわらず、アンチゴライト等であると判定されている懸念がある。
(独)産業医学総合研究所等において、市販されているいくつかの蛇紋岩系モルタル混和材について、鉱物の結晶水の脱水温度の違いを利用した微分熱重量法(以下「DTG法」という。)により分析を行ったところ、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示された商品の中に、相当量の石綿を含有するものがあるとの結果が得られた。
本省においては、中央労働災害防止協会に「左官用モルタル混和材中の石綿含有率の測定方法等に関する検討会」を設置してこの問題について検討を行い、その報告書が別添1のとおり取りまとめられたところである。同報告書においては、蛇紋岩中のクリソタイル、アンチゴライト及びリザルダイトを区別して定量分析する方法として、DTG法が有効であるとの結論を得たところである。
左官用モルタル混和材を取り扱う作業は、乾燥した蛇紋岩の粉体をモルタルセメントに混ぜる作業を伴うものであり、クリソタイルの発じん量が極めて多く、労働者が当該粉じんを吸入するおそれが高いものであり、また、「無石綿」等と表示されているため取り扱っている労働者が充分なばく露防止措置を講じていないことが予想され、石綿による健康障害につながるおそれがある。
このため、貴職におかれては、下記に留意の上、関係団体、事業場等に対し周知、指導を行うなど、対応に万全を期されたい。
なお、本省においては、別添2のとおり関係団体に対して文書要請をしているので、申し添える。
記
1 |
製造事業者に対する措置
|
||||||
2 |
左官工事業者等使用者に対する指導 |
別紙
蛇紋岩中のクリソタイル定量方法
蛇紋岩含有の被験試料 |
↓
粉末化 |
↓
X線回折分析 |
↓
蛇紋石のピークを確認 |
↓
DTG法による分析 |
↓
クリソタイル、アンチゴライト、リザルダイトの確認 |
↓
計算でクリソタイル含有量を求める |
別添2
基発第0702004号
平成16年7月2日
(関係団体の長) 殿
厚生労働省労働基準局長
蛇紋岩系左官用モルタル混和材による石綿ばく露の防止について
日頃から労働安全衛生行政の推進に格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、左官工事等おける作業性の向上等のために、蛇紋岩を粉砕したモルタル混和材が種々販売されておりますが、それらのほとんどは石綿を含まない「無石綿製品」等として販売されております。しかしながら、現在最も広く行われているX線回折を用いた分析法では、蛇紋石を構成するクリソタイル(石綿)とアンチゴライト及びリザルダイト(いずれも非石綿)がそれぞれ当該成分の含有を示すピークをほぼ同じ位置に持つため、クリソタイルが入っているにもかかわらず、アンチゴライト等であると判定されていることが懸念されています。
(独)産業医学総合研究所等において、市販されているいくつかの蛇紋岩系モルタル混和材について、鉱物の結晶水の脱水温度の違いを利用した微分熱重量法(以下「DTG法」という。)により分析を行ったところ、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示された商品の中に、相当量の石綿を含有するものがあるとの結果が得られました。
厚生労働省では、こうした状況にかんがみ、中央労働災害防止協会に「左官用モルタル混和材中の石綿含有率の測定方法等に関する検討会」を設置してこの問題について検討してまいりました。この度その報告書が別添のとおり取りまとめられ、蛇紋岩中のクリソタイル、アンチゴライト及びリザルダイトを区別して定量分析する方法として、DTG法が有効であるとの結論を得たところです。
蛇紋岩系モルタル混和材を取り扱う作業は、乾燥した粉体をモルタルセメントに混ぜる作業を伴うものであり、その発じん量が極めて多く、クリソタイルを含有する場合、労働者が当該粉じんを吸入するおそれが高いものであり、また、「無石綿」等と表示されているため取り扱っている労働者が充分なばく露防止措置を講じていないことが予想され、石綿による健康障害の発生が極めて憂慮されています。
このため、厚生労働省では製造事業者等に対する周知等を実施しておりますが、貴団体におかれましても下記の事項につき、傘下会員事業場等に対し周知徹底をいただきたくお願い申し上げます。
記
1 |
現在使用している蛇紋岩系左官用モルタル混和材について、「無石綿」、「ノンアスベスト」等と表示されている製品も含めて、製造・販売者等に対して、別紙1の方法によりクリソタイル(石綿)の含有が認められないことが明らかになったものであるかどうか確認すること。 |
2 |
別紙2に該当する等現在使用している蛇紋岩系左官用モルタル混和材が石綿を含有するものであることが明らかになった場合には、労働安全衛生法第57条及び第57条の2に基づき、その表示を「石綿含有」等に改めるとともに、製造・販売者等に対し化学物質等安全データシート(MSDS)の交付を要求すること。 |
3 |
蛇紋岩系左官用モルタル混和材については、別紙1の方法により石綿の含有が認められないことが確認された製品への代替化を促進すること。 |
4 |
石綿を含有することが明らかになった製品を使用する場合には、特定化学物質等障害予防規則等の関係規定に基づくばく露防止対策をとるとともに、関係労働者に対して化学物質等安全データシート(MSDS)により得られた情報等をもとに石綿による健康障害予防のための労働衛生教育を実施すること。 |
別紙1
蛇紋岩中のクリソタイル定量方法
蛇紋岩含有の被験試料 |
↓
粉末化 |
↓
X線回折分析 |
↓
蛇紋石のピークを確認 |
↓
DTG法による分析 |
↓
クリソタイル、アンチゴライト、リザルダイトの確認 |
↓
計算でクリソタイル含有量を求める |
別紙2
石綿を含有することが明らかになった左官用モルタル混和材一覧 (平成16年6月現在までに把握したもの) |
1 |
「モルスター」 モルタル及び補修材用混和材 |
2 |
「ノンアスエース」 補修用混和材 |
3 |
「NSハイパウダーII」 非石綿系作業性改良材 |
4 |
「サンモール」 セメント混和材 |
5 |
「ハイワーク」 しごき・補修用混和材 |
6 |
「ニューコテエース」 左官用作業改良材 |
7 |
「ビルエース」 補修用混和材 |
関係団体
(社)日本左官業組合連合会
(社)建築業協会
(社)住宅生産団体連合会
(社)全国建設業協会
(社)全国中小建築工事業団体連合会
(社)日本鉄道建設業協会
(社)プレハブ建築協会
(社)建設産業専門団体連合会
(社)全国中小建設業協会
(社)日本建設業団体連合会
(社)日本土木工業協会
(社)日本道路建設業協会
(社)全国建設産業団体連合会
全国建設業共同組合連合会
全国建設産業協会
(社)日本建築学会
(社)日本電力建設業協会
住宅リフォーム推進協議会
(社)日本建築士事務所協会連合会
(社)日本建築家協会
全国建設労働組合総連合
建設業労働災害防止協会
日本建築仕上材工業会
押出成形セメント板(ECP)協会
セメントファイバーボード工業組合
せんい強化セメント板協会
全国石綿スレート協同組合連合会
(社)日本建築材料協会
(社)日本石綿協会