〇 土壌汚染者に浄化義務を検討−環境庁 工場跡地の転用増加に新法検討 2000.9
環境庁は有害化学物質や重金属による工場跡地などの土壌汚染に対応するため、汚染者らに汚染の浄化・除去を義務づける新法の本格的な検討に乗り出す方針を固め、費用の負担方法や制度の内容を詰めて2002年の通常国会への提出を目指しています。
浄化の仕組みは、土壌の環境基準を満たさない地域のうち対策が必要な地域を都道府県が指定し、汚染除去事業の実施などを盛り込んだ対策計画を策定するというダイオキシン対策特別措置法を参考にするもの。 費用負担では、@原則的には汚染者が支払うが、汚染者が分からない場合は土地の所有者にするか、A農用地と同じように公共事業で浄化することが可能かが焦点となります。
基準値については、汚染された土に接触することなどで人体に直接取り込まれる量を推定して浄化の基準となる新しい環境基準を設定する必要があり、住宅か工場かなど土地の用途で異なる浄化レベルを採用することも課題となります。このほか新法に自治体や事業者による土壌汚染の調査や情報の管理、事業者の協力の義務などをどう盛り込むか検討するとのことです。
〇 シックハウス症候群対策、各省庁で本格化 年度内に大規模調査、改修工事の確立目指す―建設省
建設省は、専門家60人で「室内空気対策研究会」を組織し、年度内に、シックハウス症候群対策に着手します。1000〜2000戸の大規模な実態調査を行うほか、モデル住宅により効果を検証、低コスト・短工期の改修
技術の開発を目指します。住宅生産者を対象とするガイドラインの拡充にも取り組みます。2001年度には同省建築研究所も本格的プロジェクトを発足させる予定で、連携して施策展開していく方針とのことです。
化学物質汚染を調査、全国50校の教室対象―文部省
文部省は全国50校を対象に化学物質による教室内の空気の汚染実態を調査することを決め、宮城など7都府県教育委員会に通知しました。調査結果を基に、教室の換気の頻度や窓の開放時間など、子供たちに望ましい室内空気を維持する方法を決めるとのことです。必要があれば換気扇の設置や使用建材の指定、補助金のかさ上げなども検討していく方針です。
作業環境を調査、化学物質の基準設定―労働省
労働省はビルやマンションの内装工事など関連する作業現場の実態と作業員の健康状態について調査を実施する方針を固めました。調査は内装工事や合板製造現場など全国20カ所で、空気中のホルムアルデヒドや
トルエンなどの濃度を測定する予定です。又複数の汚染物質の総量について定めた厚生省の室内濃度指針値に基づき、住宅とは別に職場の化学物質の濃度基準も設定します。
シックハウス対策2001年度概算要求―厚生/労働省
厚生、労働両省は2001年の統合後の「厚生労働省」予算で、シックハウス対策を強化するため、新たに4億円程度を要求に盛り込みました。化学物質の複合暴露に関する実態・疫学調査と職域におけるシックハウス対策の確立などを一体的に行うことで、健康障害予防対策が強化される見通しです。
東京都初調査、3物質指針値上回る
東京都はこのほど、シックハウスの調査結果を公表しました。調査は住宅など35施設で実施され、対象7物質のうち6物質が検出され、トルエンなど3物質が指針値を上回ったとのことです。
〇 地下水の流れ、衛星でキャッチ−環境庁
環境庁は来年度から、「降雨→地下水→河川→海→蒸発→降雨」といった「水循環」の状況を人工衛星のセンサーなどを使って解析する「環境監視情報技術」(環境IT)の開発に着手する方針を固めました。
今回採り入れたのは、可視光線や赤外線などの反射の度合いから土地の温度や植物の状態を割り出す人工衛星の「リモートセンシング」(遠隔探査)という方法で、火山活動や熱帯雨林、海洋汚染などの調査に使われてきてお
り、水循環に使われるのは初めてだそうです。これにより降雨の地下浸透率を推計します。
また、いままで正確な把握が難しかった地下水の流れは、ラドンやトリチウム(三重水素)などの同位体の性質を利用して調べます。これによって地下水の流れる方向や速さがわかるそうです。
環境庁は、先日、素案の大枠がまとまった「新環境基本計画」の中でも、水循環に着目した施策の必要性を訴え、各都道府県に「水循環保全計画」を立てるよう求めています。地下浸透や地下水の流れを把握することは、こ
うした計画づくりにも役立つとしています。
〇 下水道法改正を視野に水環境など検討へ−都市計画中央審議会
下水道の法制度や事業のあり方について検討するため、都市計画中央審議会の基本政策部会に8月3日、下水道小委員会が設置されました。健全な水環境系の構築や良好な水環境の形成、下水道における水系リスク管理の高度化、管渠(きょ)ネットワークを活用した高度情報化など、現在の下水道法では対応できない、下水道に求められる新たな機能や役割などについて、法改正を視野に入れて検討するようです。
主な検討事項としては、
> 健全な水循環系の構築・良好な水環境の形成
> 都市の雨に都市全体で対応する雨水対策の推進
> 下水道における水系リスク管理の高度化
> 循環型社会構築に向けた下水汚泥の減量化・リサイクルの推進
> 管渠ネットワークを活用した高度情報化
> 民間活力の導入等による経営の効率化
> 下水道の多様な役割の明確化のための責任体制化の向上 などです。
9月上旬に小委員会での検討を開始し、12月初旬に小委員会の報告がまとめられる予定だそうです。
〇 PRTRパイロット事業を全国30ヵ所で展開−環境庁
環境庁の今年度のPRTRパイロット事業が始まりました。今年度は全国30ヵ所での実施で、対象物質、事業所などはPRTR法に対応した調査となりました。調査票等は8月から9月にかけて回収され、データ集計とヒアリング調査などを経て年内に報告される予定です。
対象物質: 第1種指定化学物質 354 物質
対象事業所: 施行令で示す業種で常用雇用者数が 21 人以上の事業所
取扱量: 第1種指定化学物質の年間取扱量が1トン以上(特定第1種指定化学物質は0.5トン以上)
パイロット事業は既に97年度から始まっており、今回が4回目。2001年度の本番を目前にパイロット事業の成果にに期待がかかっています。
「今年度実施自治体:関東」 茨城県(日立市など4市町村)、千葉県(市原市など3市)、東京都(大田区の一部)、神奈川県(藤沢市など3市町)、川崎市(川崎区など3区)
〇 ダイオキシン類99年度重点水質調査−環境庁
環境庁は99年度に行った公共用水域等のダイオキシン類調査の結果を8月25日発表しました。水質のダイオキシン類平均濃度は0.24 pg-TEQ/l(568地点)。底質の平均濃度は5.4 pg-TEQ/g(542地点)。また地下水の平均濃度は0.096 pg-TEQ/l(296地点)と、前年度結果とほぼ同じ結果です。
しかし、一方で福島県逢瀬川の水質より14 pg-TEQ/l、神奈川県引地川では13 pg-TEQ/l と、高濃度で検出される地点も数カ所あり、環境庁ではこのような地点が潜在的にまだ存在していると予想しています。そして、この原因を調査するため各水域に排水を排出している事業所や工場等の検査を行うと発表しました。すでに、引地川下流域の主な汚染原因は荏原製作所藤沢工場の配水管の誤接続であったことが判明しています。逢瀬川の汚染原因も、保土谷化学工業の廃棄物焼却炉の排ガス洗浄施設排水であると発表されました(昨年8月の自主測定の結果から、今回の調査以前に稼動は自主停止)。同社ではすでに対策工事を完了させているとしています。このほか、原因がまだ特定されていないものの綾瀬川水域(埼玉県)、恩智川・第二寝屋川水域(大阪府)などでも汚染の広がりが確認されています。
底質調査では綾瀬川水域の1地点で720 pg-TEQ/g と過去の調査結果の範囲を超える濃度が検出されており、埼玉県は今後、実態調査を行う予定です。また、「底質のダイオキシン類には環境基準値が定まっていないので、早急に環境基準値を制定する必要がある」(環境庁)としています。
これらのことを考え合わせますと、各事業所・工場での自主測定・排出管理を十分行い、二次汚染などにも注意を払うことが企業としてのリスクマネージメントの意味からも重要な意味をもって来たと言えます。
資料:8月25日付 環境庁報道発表資料
〇 内分泌かく乱作用物質関連 いわゆる環境ホルモン判定へ試験法を研究: 環境庁
環境庁はさまざまな化学物質が環境ホルモンとしての作用を持つかどうか判定する試験方法の研究に取り組みます。これにより効果的な試験方法を確立し、化学物質の危険性評価に活用する予定です。専門家で構成する同省の内分泌かく乱物質問題検討会が3年がかりで研究に取り組みます。乳がん細胞を使う判定法など一部で有望視されている手法を検討するほか、独自の手法の開発にも挑むそうです。[日経産業]
化学品審議会試験判定部会の文献評価報告
化学品審議会試験判定部会の内分泌かく乱作用検討分科会では環境庁が内分泌かく乱作用の疑いがあるとしてリストアップした67物質のうち、国内で使用されていない物質を除いた 40 物質を対象に文献評価を進めています。
このほど同分科会が開催され、内分泌かく乱作用が疑われている化学物質のうち、4‐ニトロトルエン、アジピン酸ジエチルへキシル、フタル酸ジ‐n‐ブチル、フタル酸ジ‐2‐エチルへキシルの4物質について国内外
の文献評価結果が報告されました。4物質とも何らかの生体異常が認められるものの、これが内分泌かく乱作用によるものなのか十分な化学的知見は得られていないとしています。
これまで9物資について中間報告を行い今回の4物質と併せて13物質の文献評価を完了しています。次回の分科会ではノニルフェノールとビスフェノールAの2物質について審議します。[化学工業日報]
〇 平成11年度地方公共団体等の有害大気汚染物質 モニタリング測定値の評価と調査結果−環境庁
平成9年に施行された改正大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団体では有害大気汚染物質の
大気環境モニタリングを本格的に開始しました。しかし今回、平成11年度に地方公共団体が実施した有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果について、環境庁の調査結果と併せてとりまとめることになりました。
まず、ダイオキシン類については、夏季及び冬季を含め年2回以上測定した地点での測定結果を平成12年1月から施行されたダイオキシン類対策特別措置法による大気環境基準値(0.6 pg−TEQ/m3)と比較すると、殆どの地点で基準値を下回っていたそうです(463地点中7地点(1.5%)で基準値を超過していました)。
ベンゼンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたり測定した地点での測定結果を平成9年2月に設定された環境基準(3 μg/m3)と比較すると、340地点中79地点(23%)について環境基準値を超過していたそうです。
トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、すべての地点において環境基準値(ともに200μg/m3)を下回っていたそうです。これらの物質濃度を経年で比較すると、減少傾向にあると言えます。
今回の調査結果でも特定の地点では依然として環境基準を超える高い濃度が記録されており、重点的な検討が進められているところです。
環境庁としては、今後とも有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図るとともに、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策の推進に役立てていきたいとしています。
資料: 8月24日付 環境庁報道発表資料(大気保全局HP)
〇 ディーゼル排ガス対策、費用補助、制度化へ−環境庁
環境庁は来年度から自治体がバスにディーゼル排気微粒子(DEP)を除去する後処理装置(1台約200万円)を装着する際、費用の1/2を補助する方針を決めました。来年度予算の概算要求に約2億円を盛り込み、首都圏や近畿園などから優先的に補助を始めたいとしています。
運輸省は、民間事業者のディーゼルトラックへの装着に対して、1/4の補助を行うため、約2億5千万円を概算要求します。
DEPとはディーゼル排ガスに含まれる粒径1μm以下の微粒子で、発がん性があるほか、ぜん息を起こすことも動物実験などで判っています。
後処理装置は、DEPの約9割以上を除去することができます。環境庁、運輸省などで構成する検討会も7月、「一律の義務付けは技術的に困難」としながらも、車種によっては有効な排ガス対策だと認めました。その上で、自治体のディーゼル車への装着補助は環境庁が、民間事業者へは運輸省がそれぞれ担当することで合意していました。
環境庁は、首都圏と近畿園などの大気汚染改善のため、自動車窒素酸化物(NOx)削減法の改正を検討しており、ディーゼル乗用車の販売禁止に加えて、ディーゼルトラックを最新規制車に強制的に代替することなどを柱にする方針です。しかし今走っているディーゼル車は購入時期によっては猶予期間が設定され、買替えまでの間の対策が急務とされていました。
〇 公害防止計画、見直しへ−環境庁
環境庁は、大気汚染など公害のある地域を政府が指定し、補助率をかさ上げして環境改善を図る「公害防止計画制度」を30年ぶりに見直す方針を固めました。9月にも中央環境審議会で改善策の検討を始め、その意を受けて来年の次期通常国会で公害防止の財政特別措置法の改正案を提出する予定です。
公害防止計画は工場排水・排煙などによる激甚な公害被害を解決する目的で、1970年に始まりました。政府の基本方針をもとに知事が計画を策定し、国の承認を得ると、公害財特法で公害防止、下水道、廃棄物処理施設などの事業に高い補助金が適用されてきました。5年計画の終了後も環境基準の未達成などを理由に、自治体の側が再指定を希望し、大半が継続されています。しかし、どの防止計画でも環境基準の達成を掲げながら、補助金の大半は廃棄物処理施設に使われています。
処理施設は全国一律の補助率 1/4 に対して、防止地域なら 1/2 に優遇されるため、公害防止地域以外の自治体の間で不満が高まっていました。
環境庁が私的検討会でまとめた報告書では、@地域固有の事情に応じた防止計画に転換する。A廃棄物処理施設への偏りを修正するために、補助金のメニューを増やし、ソフト面も支援する。B協議会を作り、防止計画の進み具合をチェックする―などを提案しています。
財政支援は、建設省が自然型の河川改修を対象とする方針です。環境庁は低公害車なども検討しています。地下水や土壌汚染など新たな問題については、自治体の要望は大きいのですが、環境庁が独自に補助金を確保できるかは未定だとしています。
〇 企業環境投資に優遇体制−中央環境審議議会素案
中央環境審議会の企画政策部会は、8月4日開催の小委員会で、国の環境行政の基本方針として5年ごとに見直す環境基本計画の素案をまとめました。この案は8月9日からの部会で審議された後、国民の意見を募り、年内に答申、閣議決定の予定となっています。
新計画は、環境計画など企業の自主的取組みを初めて政策の主要な手段として位置づけ、支援を強めていくことを打ち出しています。また、重点分野として地球温暖化、化学物質対策、健全な水循環確保、廃棄物リサイクル、交通、生物の多様性の確保、環境投資、環境教育、国際的寄与、地域づくり、経済社会のグリーン化メカニズムの計11項目を挙げ、施策の基本方向を示しました。
従来の環境行政では、環境基準の設定などの規制的手法や、廃棄物のデポジット制度など経済的手法が中心でした。今回、企業が自らの環境対策の費用と効果を比較する「環境会計」や、自らの環境保全活動をまとめる「環境報告書」を導入し始めているのを受けて、国として環境会計や環境報告書のガイドラインを作成するほか、企業の環境保全投資に対して税制などで優遇する考えです。また、温暖化への経済団体や建設団体の取り組みも支援する予定です。
水循環対策では、雨水が地下に浸透する量が多ければ、地盤が安定し、渇水時には河川にしみ出し、水辺の生物に好影響を与えるなど、水循環が健全になるため、雨水の地下浸透量について、関係者の意見を聞いた上で、流域ごとに目標値を設定することを提案しています。
〇 生ごみ堆肥化へ買取り保証:片倉チッカリン
今年10月の肥料取締法の改正に伴う特殊肥料の品質表示義務化や、食品リサイクル法の成立に伴う生ごみ処理装置の普及拡大に対応して、大手肥料メーカーの片倉チッカリンが生ごみ堆肥を買取保証するシステムを構築しました。同社が従来行っていたシステムは、生ごみ処理機「エコビジョンシリーズ」(環境総研製)の設置事業所から発酵生成品をキロ当り2円で買い取り、「エコボカシ」の商品名でボカシ肥料として販売するものでした。新たに構築されたシステムでは、発酵生成品を堆肥の製造業者に持ちこみ、熟成させて施肥しやすい堆肥にしたうえで農家に供給するもの。
従来のシステムでは処理機を設置した事業所ごとに特殊肥料生産業の届出を行っていましたが、新システムではその届出は最終的には堆肥を製造する業者が行うことになります。表示が義務づけられた品質については、同社独自の基準を設けていますが、これまでの「エコボカシ」より実態に則した内容に修正されます。
油 分: 従来3%以下、新システム 7%以下、
全窒素: 従来2.5〜3.5%、新システム 2〜2.5%。
〇 シックハウス対策を強化、通産省、住宅建材でJIS見直し
通産省は8月10日、来年度内に住宅建材の日本工業規格(JIS)を見直す方針を明らかにしました。社会問題化している室内化学物質汚染対策の強化を目的とし、JISを取得する際の条件となる濃度基準物質に、シックハウス症候群の原因物質である従来のホルムアルデヒドのほか、新たにキシレン、トルエンなど揮発性有機化合物(VOC)を追加します。また、扉や断熱材、畳、建具など最低4品目をJIS対象に加え、品目数を2倍に増やす考えです。
現在、JIS規格が設定されている建材は、「壁紙」・「壁紙に使う接着剤」・「パーティクルボード」・「繊維板」の4品目です。建材メーカーが自社製品についてJISを取得する際は、強度や材料密度のほか、化学物質については部材から室内へのホルムアルデヒドの放散濃度基準を満たす必要があります。今回、厚生省がトルエン、キシレン、パラジクロロベンゼンの3物質について指針値を決定したことを背景に、通産省はJIS規格でも同様の基準が必要と判断し、さらにこの測定法もJIS規格で定めることにしました。現在、ホルムアルデヒドの基準は3段階で、E0(0.5 mg/l)、E1(1.5 mg/l)、E2(5.0 mg/l)となっています。VOCについても同様に3段階の基準を設定する見通しです。
さらに、農水省の日本農林規格(JAS)で定める部材についても何らかの対策が必要となり、JASは今年8月に対象品目を従来の合板・床材(フローリング)5品目から12品目へと拡大、濃度基準もJIS規格に合わせて厳しくなりましたが、「VOCの基準設定は今後検討する」(農水省食品流通局品質課)としています。