〇 シックハウスで厚生省が指針策定へ 室内濃度は室外値の3倍以上             2000.1

 

新築住宅などで起きる健康被害「シックハウス症候群」との関連が指摘されている揮発性有機化合物44種類について、室内と室外で空気中濃度を調べた結果、殆どの物質で室内のほうが室外より3倍以上高い値を示し、発生源が室内にあることが確認されました。調査は9798年度に全国の一般住宅385戸を対象に実施され、揮発性化学物質の濃度を24時間続けて測定したものです。国がこれだけ大規模な調査をしたのは始めてで、厚生省は結果を踏まえてトルエンなどのリスク評価を実施し、来年4月までに策定する方針です。

 WHOが指針値を設けている8物質のうち、トルエン、キシレン、クロロホルムの3物質で指針値を上回る値が検出されました。特にトルエンは全体の約6%の家屋で基準値を上回り、平均値は空気13当り123μgで、最高値は3390μgと指針値(260μg)の13倍に達しました。

 また、防虫剤に使われるパラジクロロベンゼンは、全体の約5%の住宅で厚生省が定めた指針値を上回り、最高値は基準値の10倍値を検出するなど、すべての物質で高濃度の汚染が一部住宅でみられました。これらの住宅に住む人達の個人暴露濃度については、全般的に、室内濃度と高い相関性を示したことから、室内暴露が個人暴露に大きく寄与していることが明らかになりました。

 住宅の条件別に見ますと、新築住宅(3ヶ月)はトルエンなど一部の物質では中古住宅の2倍以上濃度が高かったほか、一戸建てと集合住宅、木造住宅と鉄筋・鉄骨住宅などの間には明確な差はありませんでした。

 同省によるとこうした化学物質の室内濃度の平均値は、諸外国の研究結果と同じか半分程度の水準だったが「一部の住宅ではケタが違う数値が出ており、とても望ましい状態とはいえない」として、住宅・建材業界や防虫剤メーカーらに、製品の改善や啓発活動への協力を呼びかける方針です。

 

資料:厚生省報道発表資料(生活衛生局規格課)

 

 

〇 ジクロロメタンの排水規制強化を決定−環境庁

 

環境庁はこのほど、有害物質のジクロロメタンを使ってハイテク部品の洗浄などを行っている施設を、水質汚濁防止法上の「特定施設」に追加することに決定しました。これは、ジクロロメタンが発がん性の疑いが強いトリクロロエチレンなどの代替品として使用量が増え、地下水などの汚染の原因になっているためで、中央環境審議会の答申を得て同法施行令の一部を改正、平成1231日から施行されます。

 特定施設に追加されるのは、ジクロロメタンで機械部品などを洗浄する「洗浄施設」と、洗浄後のジクロロメタンを蒸留処理する「蒸留施設」です。特定施設に指定されると排水中の濃度に排水基準が適用され、超過し

た場合、罰則の対象となります。

 

資料:環境庁報道発表資料(水質保全局水質規制課)

 

 

〇 河川、海域、湖沼等公共用水域の平成10年度測定調査結果−環境庁

 

環境庁は平成10年度の河川、海域および湖沼などの公共用水域の水質測定結果を発表しました。環境基準の達成率は、全体で77.9%と前年度(78.1%)からほぼ横ばいで推移しており、汚染の改善が進んでいない実態が明らかにされました。調査は全国の3,258水域,7,290地点で、河川についてはBOD、湖沼,海域についてはCODが測定されました。

 河川は、平均で81.0%の達成率(前年度80.9%)でした。しかし、大阪府の樫井川で32 mg/L,香川県の弁天川で24 mg/Lなど、一部でBODの高い水域がみられましたが、着実に達成率が向上しています。

 一方湖沼では、特に環境基準達成率が低く、平均で40.9%(前年度41.0%)と依然として、かけ離れて低い水準のまま推移し続けています。湖沼の高濃度ワースト31位から順に千葉県の手賀沼(19 mg/L),同県の印旛沼(10 mg/L),岡山県の児島湖(9.9 mg/L)となっており、ベスト1は北海道の倶多楽湖(0.70 mg/L)でした。さらに湖沼の全窒素および全燐の達成率は前年度の42.6%から38.3%(60水域中23水域で達成)へと後退し、下水道をはじめとする各種対策の推進にもかかわらず、その改善の難しさが浮き彫りとなっています。

 また海域の達成率については73.6%で前年度(74.9%)と同程度で推移しており、全窒および全燐の達成率は海域が新たに当該水域となった水域の達成率が高かったことで、前年度の55.1%から70.5%(112水域中79水域で達成)へと大きく前進した。

 

〇 全国地下水水質測定結果−環境庁

 

環境庁により「平成10年度の全国地下水水質測定結果」がまとめられました。対象汚染物質は、地下水の水質基準である揮発性有機化合物(VOC)と重金属等につき行われ、調査の対象となった全国の井戸4,850ヶ所中2.1%に当る101ヶ所で環境基準の超過項目がみられました。また既に10年度末までに地下水の汚染が判明している井戸1,800ヶ所中1,188ヶ所で依然として環境基準を超過しており、最も超過事例が多かったのは、揮発性有機化合物ではテトラクロロエチレン(610事例)で、次いでトリクロロエチレン(420事例)、シス-1,2-ジクロロエチレン(199事例)となっています。また、重金属等ではヒ素(229事例)、総水銀(22事例)、六価クロム(18事例)、鉛(14事例)の4物質で基準超過がみられました。超過率で見ますと、テトラクロロエチレン(0.6%)とトリクロロエチレン(0.4%)は共に平成9年度よりも高い結果になっています。

 汚染原因としては、洗濯業や電子部品・デバイス製造業による排水・廃液の不適切処理、廃棄物の不適切保管等とされています。さらに対策については、今回の調査で基準超過井戸のうち、浄化などによる恒久対策が実施されているのは293ヶ所で、全体のわずか1/4しかないということです。環境庁では今後も調査や対策を促進するとともに、さらに高い技術開発を進めてゆくとのことです。

 

〇 小規模受水槽規制へ、水質基準策定措置など 13年度水質法改正へ 未規制水道に対策

厚生省は、ビルやマンションに設置される容量 10m3以下の小規模受水槽と、学校や幼稚園の自家用水道等の水道法の規制を受けない水道について規制を見直すことになりました。これらの施設は事実上不特定多数者に飲料水を供給しているものの、居住者がいないため、水道基準を担保する法律上の措置がなく、伝染病の原因ともなる事例が発生するなど、衛生上の対応が求められていることによるもので、容量 10m3 以上の「簡易専用水道」の規制強化も視野に入れています。生活環境審議会の水道部会で検討したうえで平成13年に水道法を改正するもの。

 また、ビルやマンションに設置される受水槽のうち容量 10m3を超える受水槽は、水道法に基づく「簡易専用水道」としてその管理が義務づけられているものの、10m3以下の受水槽は水道法の規制を受けておらず、

施設数は平成9年度で簡易専用水道が17万5千施設なのに対し、小規模受水槽は68万施設と圧倒的に多くなっています。小規模受水槽の管理は47都道府県のうち32都道府県、また、39政令市のうち31市が 条例、要綱などで指導しており、管理状況を検査しているのは2万4千施設で全体のわずか 3.6 にとどまっています。

 検査の結果が不適合だった施設の割合は小規模受水槽が49.4%、簡易専用水道が43.2%で、ともに管理が十分に行われているとは言えないようです。

簡易専用水道では2千施設が立入り検査や改善命令など権限をもつ行政機関に通報されています。

このため、厚生省の「水道基本問題検討会」は6月にまとめた『21世紀における水道及び水道行政のあり方』のなかで“簡易専用水道について規制導入から25年を経た今日でもその目的が十分に達成されているとは言えない"と指摘し“未規制水道を含めて水道基準を満足している水道水と同程度の安全性が確保されるべきであり、

『飲料水の水質基準』の設定を含めて、そのために必要な措置が望まれる”と提言しました。

 さらに、行政施策の方向として「水道法による現行規制が適用されない施設であっても、事実上不特定多数の人の飲料水を提供することとなっているものについては、衛生規制を適用する必要がある」と指摘しました。

簡易専用水道については、利用者の不安感を払拭するため水道事業者が管理状況を検査することを検討するよう求めています。

 これらを受けて厚生省は、未規制水道等の規制的見直しに取り組むことになったものです。

 

 

〇 レジオネラ症防止指針を大幅改訂−厚生省

 

厚生省監修、(財)ビル管理教育センター発行の、レジオネラ症防止のガイドラインである「レジオネラ症防止指針」が大幅に改訂されることとなりました。

 現在の指針の発行当初は、冷却塔および冷却水系で発生するレジオネラ属菌を想定していましたが、この間に病院や24時間風呂などの浴室での発生・感染が社会問題となったことから、これらの場面での調査が行われた。

 新しい指針では、ある温度条件の水がありエアロゾル化の機会があれば感染の機会があり得るとしています。そのため、エアロゾルを飛散させる装置を組み込んでいる設備の危険性を指摘し、維持管理、任命委託、故障・誤操作・不測の事態に関連した危険性を考慮した対策を立てることを訴えています。

 特に、病院や養護施設のような場所、人口密度が高く潜在的危険性がある人の数が多い地域、浴場・浴室などの湿度の高い場所などには注意を促しています。また、給水・給湯設備のレジオネラ汚染防止対策について大幅に加筆。このほか、加湿器、畜熱槽、循環式還流層などについても汚染防止対策の方策を盛り込んでいます。24時間風呂については、同風呂を利用した水中出産により新生児が死亡した事例についても触れているそうです。

 

〇 ダイオキシン類対策特別措置法 1月15日施行

 

昨年7月公布のダイオキシン類対策特別措置法が115日施行され、同法による環境基準、排出基準などの適用が始まりました。政府は排出基準の適用施設を追加し、規制を強化することで、2002年度までに97年度に比べ総排出量を約9割削減するとの目標達成を目指しています。環境基準は、環境大気が0.6 pg/m3、水質は1.0 pg/l、土壌は1000 pg/gと定められました。またこれらの基準を達成するために、排煙、排水に排出基準も定められました。

 排煙の排出基準は、これまで大気汚染防止法、廃棄物処理法で定めていたのと同数値ですが、廃棄物焼却炉では対象施設を焼却能力50 kg/h以上の施設にまで拡大したほか、亜鉛回収施設、アルミ合金製造施設、鉄鋼業燒結施設も新たに規制の対象となりました。排水基準は10 pg/l とされ、対象施設は廃棄物焼却炉、パルプ製造施設、アルミ合金製造施設などが指定されました。排煙、排水基準は新設施設には直ちに適用。既設施設については原則として1年後から適用されますが、それまでは廃棄物処理法などの規制が適用されます。

 特別措置法の施行に伴い、建設省では河川の水質と底質の調査を12月に行います。また通産省も来年度からダイオキシン類排出実態調査に予定していた排ガスに排水を加え、調査対象も従来の4分野に数分野を加えて排出削減を促す考えです。

 さらに措置法には環境調査で基準を達成できない場合、都道府県は住民の意向などを受けて地域を指定し、法律よりも厳しい排煙、排水基準を設定できるとする「総量規制」を盛り込んでいます。仮にこれが適用される

と、それまで基準を満たしていたのに適用後は基準を超えるということも考えられます。しかし、同法には規制をかける地域を指定する際の細かな施行令が定められていないなど不明な部分も残しています。いずれにして

も規制対象施設をもつ事業者は、施設の運転管理や改修などの維持管理、また自主測定などを計画的に行い排出管理をしてゆくことが重要になってゆくと考えられます。

 

   ダイオキシン類の環境基準と排出基準(ダイオキシン特別措置法の関係)

   (ダイオキシン類とは、ジベンゾ p ジオキシン、ジベンゾフラン及びコプラナ−PCBsの総量)

   ◆環境基準(単位・ピコグラムTEQ) 

     ◆上水基準(単位・ピコグラムTEQ)

大気(1立方メ−トル当たり)

 0.6

水質(1リットル当たり)

1.0

水質(1リットル当たり)

 1.0

     ◆焼却炉集塵灰排出基準

土壌(1グラム当たり)

 1000

 (単位・ナノグラムTEQ/1グラム 当たり) 

底質                      

未定

  未定

  3 

   

◆排ガス基準(単位・ナノグラムTEQ/1立方メ−トルあたり)

 

排水基準(単位・ピコグラムTEQ/1リットル 当たり) 

 対象施設

新設

 既設

暫定値

 

 対象施設

 新設

 既設

暫定値 

廃乗物廃却炉

 

 

 

 

紙パブレプ製造

 10

 10

 − 

火床面積0.5u以上が対象

 

 

 

 

アルミニウム製品製造

 10

 10

 20 

   焼却能力4トン以上

0.1

 1

 80

 

塩化ビニール製造

 10

 10

 20 

         2〜4トン

 5

 80

 

一般・産廃焼却

 10

 10

 50 

         50キロ〜2トン

 10

 80

 

PCB分解

 10

 −

 − 

製鋼用電気炉(1MVA以上)

0.5

 5

 20

 

PCB汚染洗浄

 10

 −

 − 

鉄鋼業焼結(1t/h以上)

0.1

 1

 2

 

上記事業所の排水処理

 10

 10

 − 

亜鉛回収(0.5t/h以上)

 10

 40

 

下水道終末処理

 10

 10

 − 

アルミニウム合金製造(0.5t/h)

 5

 20

 

廃棄物最終処分場

 10

 10

 − 

 排ガス・排水の基準は新設が20001月、既設は20011月から適用。

暫定値が設けられた既設の施設は、排ガスで200211月まで、排水は2003年1月まで暫定値を適用する。